テーマは——「“まだ終わってない”を信じる力」

特集：火鉢の前の男たち vol.1

「“まだ終わってない”を信じる力」──それは、再点火のための静かな火種だった。

「何かを始める勇気じゃなく、
“まだ終わってない”って信じる力が必要だった。
火鉢さんの言葉は、それをくれた。」

そう語るのは、元・航空自衛隊の男、松井圭吾（仮名・39歳）。
任務と規律、そして長年の“正解”に囲まれた人生。
彼が「このままでいいのか」と思い始めたのは、退官の2年前、夜勤明けの独り言だったという。

「始める勇気より、“終わってない”と思える力が、ほしかった」

「みんな“新しいことを始めればいい”って簡単に言うんです。
でも、自分にはピンとこなかった。
それより“今までの人生が、まだ終わってない”って思えるほうが、
ずっと希望だったんですよ。」

人生を一度、どこかで“焼き尽くした”と感じた男たちにとって、
次の一歩は“チャレンジ”でも“冒険”でもなく——
再点火だ。

火鉢にて──「自分を失くさずに、もう一度、火をつける」

「火鉢さんは“何かを足す”んじゃないんです。
俺の中に、まだ火が残ってることを教えてくれた。
だから“火種を探す”って感じでした。」

火鉢の前で交わされた言葉たちは、彼の中で眠っていた“熱”を呼び覚ました。
それはかつて任務に向かっていた時の集中力とも、家族を守るという使命感とも違う、
**もっと原始的な、“自分として生きるための熱”**だったという。

「誰かの正解じゃない。俺の“余熱”が答えだった。」

「やっとわかったんです。
俺の人生に必要だったのは、“転職成功”じゃなかった。
“まだ燃えられる俺”を信じられること。
そして、その火がどんなかたちでも、人の役に立てると思えること。」

彼は今、自分の経験を活かしながら、
小さな町の地域防災チームの一員として活動している。

最後に、火鉢さんはこう言った。

「火は、派手に燃えるだけじゃない。
灰の下でくすぶる火にこそ、
本当の力があるんだよ。」